【ご報告】ニコゼミ2020 セッション4 家族とのくらし

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ニコゼミ2020 専門職のための“互学”のすすめ」セッション4 家族とのくらし について、
11/24(火)に行ったセッション4-1、12/8(火)に行った4-2の2つについての概要をご報告します。

 

まず、セッション4-1「家族とのくらし ―家庭の中のケアとチームワークについて―」のご報告です。
ハナシテさんは、訪問診療、訪問看護、通所施設等の様々な在宅の医療福祉サービスに携わって来られた株式会社スペースなる代表兼看護師の梶原厚子さんです。

この回は15名の受講生(看護師7名、保健師1名、保育士3名、理学療法士1名、特別支援学校教員1名、介護士1名、相談支援専門員1名 )が参加してくださいました。

ハナシテさんからは、梶原さんがこれまで経験したことについて触れられ、「重度の障がい児のお母さんが仕事に100%復帰する」というエピソードがありました。他の事業所と協力し、重症の障がい児の親が保証されている制度をめいっぱい使えるようにすることで選択できるようにされてきたという話がありました。キーワードは「家族をめいっぱい支え、しっかり対話すること」「他事業所としっかり連携をとること」だと感じました。そういったパワフルな話を踏まえて、深堀したいこと等を受講生でディスカッションしました。

 
“梶原さんの経験を聞いて、感じたこと・もっと聞きたいこと”

*ディスカッションの内容・意見を一部抜粋し、ご紹介します。

[看護師] 家族の「介護負担軽減」と「家族がやるべき育児」のバランスを考えて、どこまで第3者の自分たちが介入するか悩みます。自分たちがやり過ぎると親が育児する機会を奪ってしまうように感じることがあります。
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[梶原さん] 家族には選ぶ権利があり、選択できるすべてを限度まで選べるようにサポートするスタンスです。限度を知るから必要かどうかが見えてくると思うし、自分(梶原さん)自身が子育ての際にたくさんの人に子育てを手伝ってもらったから与えられた選択肢をすべて検討できるようにしてあげたいと思っています。

[看護師] 分野を超えた協力が相乗効果を生んでいると感じた。患者さんのことを考えていても、愚痴大会になってしまうことはけっこうあって、「これからどうするか」という前向きな話が必要だと感じています。「疲労したナースが保育所のナースになってから子どもたちから元気をもらって回復した」という話を聞いて、違う分野のことをやってみると意外と今の自分のケアにつながっていたりするのかなと思いました。

[相談支援専門員] 病院で生まれて障がいの判定を受けて子が退院するところからかかわることがあります。どのサービスがどれくらい必要かを具体的に判断しないといけないんですが、看護師さんの目線でそれをどんな風に判断するのが適切かヒントが欲しいです。
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[梶原さん] 相談支援がかかわり始めてすぐにいろいろ問題解決できることは少ないと思います。相談支援専門員さんの手足となって動ける訪問看護等のサービスの事業所があるとそういった不安定な部分がしっかりしてくるんじゃないかと思います。

[保育士] 通所に来ている子どもの様子が怪しかったので早退させたことがあったが、ご家族からは怒られた。こういうときはどうしたらいいでしょうか。
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[梶原さん] 引継ぎなどを行う他の事業所さんにも相談して共通認識を持っておくべき。ご家族が知らない表情やしぐさ等はけっこうあって、それが急変の前兆だったりすることもありますよね。だから他の事業所さんからもそれをご家族に伝えてもらえるように準備はしておいたほうがいいと思います。

 

振り返りシートの内容も少しだけご紹介します。
「他事業所さんとの関わりは、私の場合主に通所帰宅後の訪看さんへの引継ぎが多く、業務的になりがちです。…(中略)…せっかく実際に関わる機会があるので、その子について少し雑談ができるような関係性になりたいなと思いました。」
「受けれる範囲全てのサポートを利用できるよう、家族もサポートする側も常にアンテナを張りながら情報を得、共有していく必要があるんだなぁと感じました。病院から在宅移行をスムーズに運ぶ為にも、家族が安心して社会とつながることのできる環境作りの大切さを感じました。」

 

つづいて、
セッション4-2「家族とのくらし ―日々のくらしとその中の楽しみについて―」では、
大阪で重度の障がいがある方を対象とした訪問・通所・相談の事業を幅広く行っておられる株式会社ノーサイド代表取締役の中西良介さんにハナシテさんとしてお話いただきました。

この回は12名の受講生(看護師4名、保育士3名、理学療法士1名、作業療法士1名、特別支援学校教員1名、介護士1名、相談支援専門員1名 )が参加してくださいました。

ノーサイドでは、工学博士、臨床心理士、音楽療法士、看護師、医師等の地域の人が参加できるボランティア活動がもともとあって、今回は、それを通園できない子を対象として制度に乗せて実施することでより充実した楽しい時間を作れているという事例の話がありました。
受講生も外部の人や医療福祉以外のフィールドで活躍されている方が医療福祉にかかわることで、きっとより楽しいことができるんだと感じているが、なかなか自身が所属している組織では収入面等で受け入れられ難いようです。
中西さんからは、身近な人で自身の組織の活動に参加してほしい人がいるのかを具体的にイメージして、その人にどうやったらかかわってもらえるのかを考える問いがありました。

 
“あなたが身の回りにいる人で自分の活動に参加してほしい人”
“その人が活動に参加するためにはどうしたらいい?”

*ディスカッションの内容・意見を一部抜粋し、ご紹介します。

[保育士] 作業療法士さんです。こどもは姿勢の取り方でできることが全く違うから作業療法士さんが横にいてくれると保育の時間をしっかりつくることができます。

[保育士] プレイセラピストの人です。同じ想いをもった人だったらと思っています。今所属しているところでも、外部の人の介入の話がでたんですが、収益的に難しいと言われています。
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[ハナシテさん] 収益的には確かに難しいですね。制度に乗せると言っても、そもそもボランティアだったことに人件費が出せるようになるくらいなので。それでも必要なボランティアを続けていくことを考えたら大きな変化だと思っています。

[作業療法士] 保育士さん。ほめ上手なところがすごいと思っています。

[特別支援学校教員] 質問なのですが、学校の先生も参加されていると言ってありましたが自分の学校ではそういったことは難しいんですが、どうやって実施できているんですか?
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[ハナシテさん] だいたい校長先生が許可してくれて参加されています。病院でも同じですが、上司がOKして参加、という流れですね。

 

振り返りシートからも少しだけ抜粋させていただきます。
「今回は取り組みだけでなく報酬のことも聞くことができて理想だけではなく現実的なことも知ることができました。東大阪の取り組みは異次元だけど、まず制度を知ってそのあとどう育てていけばいいのか考えることをしていきたいと思わされたセッションでした」
「事業所外の人達と連携して訪問していることが興味深く、やっぱり人と人の繋がりが支援の広がりの原点だよなと思いました。ただし、それがボランティアではなくて、お金が発生してるということも大事なことで、『制度を使って育てていく』という視点があるから大阪の支援体制が整っていっているのではないかと感じました。」

 
セッション4では、東京などの充実した制度の話や、東大阪の制度の活用によって楽しい時間を安定して作り出すことにつなげている話など、福岡との違いが大きな刺激になったのではないかと思います。
他の地域からアイデアをもらうという意味では、オンライン開催だからこそのメリットだと感じています。

互いに学び合う機会も次回で最後になります。
いのちについてというテーマでしっかり話し合いできればと思います。

 

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≪ハナシテさんプロフィール≫
4-1 家庭の中のケアとチームワークについて
●梶原 厚子(かじわらあつこ)
株式会社スペースなる代表取締役。看護師。病院勤務、訪問診療を行うクリニック、訪問看護ステーション等を経て株式会社スペースなるを設立。主に小児の訪問看護事業、研究、研修事業、補装具や座位保持装置等の販売事業を行っている。
 
4-2 日々のくらしとその中の楽しみについて
●中西 良介(なかにしりょうすけ)
株式会社ノーサイド代表取締役。ヘルパー歴16年。16年前に重症心身障がい児と出会い、支援の数も種類も少ない環境を改善したい気持ちからノーサイドを設立。 座右の銘は「そりゃ嫌なことも辛いこともあるけど、繋がりを大切にみんなで楽しくすごそう」。
 


主催:認定NPO法人ニコちゃんの会
助成:タケダ・ウェルビーイング・プログラム2018
協力:福岡大学病院小児等在宅医療推進事業