【ご報告】ニコゼミ2020 セッション1 カラダのしくみ

ニコゼミS1-1・2スクショ

いよいよ「ニコゼミ2020 専門職のための“互学”のすすめ」が始まりました。

再開するにあたりオンライン会議形式で実施することとなったため、
「コミュニケーションを大切にした学び合い」と言うには物足りなさも感じますが、今できる方法で最大限の“互学”を、毎回模索しながら進めています。
今回は、10月6日(火)に行ったセッション1-1、1-2の2つについての概要をご報告します。

 

現時点で主な進め方は、オンライン形式で少しでもディスカッションを活発にするため、以下のようになりました。
それぞれ現場で専門職として従事される方を「ハナシテさん」と呼び、話題やテーマを提供してもらい、受講生でディスカッションを行いながら、それぞれの職種から学びを深める形をとっています。

① ハナシテさんからその職業の話を聞く
② ハナシテさんからテーマをもらいグループに分かれディスカッション
③ ディスカッションの内容を全体で共有
④ 振り返りシートでより知りたいことや自分の立場に活かせそうなこと等を記入
⑤ 次回のセッション冒頭にて振り返りシート内容を簡単におさらい

今回はセッション1-1、1-2合わせて13名の受講生(医師2名、看護師3名、保健師1名、保育士3名、作業療法士1名、特別支援学校教員1名、介護士1名、相談支援専門員1名 )が参加してくださいました。

 

まず、セッション1-1「カラダのしくみ -主な臓器と子どもに関わる医師の役割についてー」では、
九州大学病院新生児科・医師 落合正行さんにハナシテさんとしてお話いただきました。
医師という立場からカラダについて遺伝子や細胞、臓器の機能などの説明後、以下のディスカッションテーマを提示してくれました。

“どんなイメージで『病名』をとらえているか?病名が先行してしまい、その相手とかかわっていることを忘れてしまうことはないか?”

*ディスカッションの内容・意見を一部抜粋し、ご紹介します。

[作業療法士] 病気のことは一通り調べるけど触れない。その子の動きをみる。「病気」を意識している自分としていない自分がいる。

[医師] 暮らしの中に病気がどういう影響を及ぼしているかに着目することが多い。

[保育士] 何が好きか。何が得意かに注目することが多い。

[医師] 病態によって支援を変えることは重要だと思うが、基本的には「こどもを育てる」ということに変わりないことを忘れないようにしている。
 

病気ではなく子どもをみるという観点は同じことが改めてよくわかるディスカッションとなったのですが、
ディスカッション後に各自に書いていただく振り返りシートをみると、テーマとは別に、病院内で関わる職種と在宅支援の職種などの「違い」が浮き彫りになる回となりました。
病院内で関わる職種は在宅生活のイメージができなかったり、逆に在宅支援の職種はそのこと自体に驚いたりしていました。
また、場所だけでなく看護師・医師と保育士・相談支援員など専門性の違いによっても、情報共有の敷居の高さを感じていたり、わかりやすい言葉で説明することの重要性を感じていたり、それぞれの立ち位置の違いに着目する機会となっていました。

 

つづいて、
セッション1-2「カラダのしくみ -身体の動きとリハの役割についてー」では、
良創夢訪問看護ステーション・作業療法士 黒田隆之さんにハナシテさんとしてお話いただきました。

リハビリのイメージは「体を動かす」ことに気を取られがちですが、本来は「その人らしく生活する」ために必要なことを目標として様々なことを改善していくことにあるそうです。そういった観点から以下のテーマを提示してくれました。

“「リハビリテーション」に関わるうえで、今の自分に出来そうなことを考えてください”

*ディスカッションの内容・意見を一部抜粋し、ご紹介します。

[保育士] 小学校入学に向けてできることを生活の中に落とし込むようにしている。呼吸が楽になる姿勢を保ったり、座って書くことに慣れたり、制作することを経験したり。

[看護師] どうしても呼吸を整えたいと思って呼吸リハに力が入ってしまう。せっかくデイサービスに来ているのに病院っぽくなってしまって…。もう少し自然にしてもいいんじゃないかと思うけど、自分の立ち位置について悩んでいる。

[相談支援専門員] 関わる頻度は多くないが、自分にできることは一生懸命コミュニケーションをとること。

[保育士] 病棟でフルーツバスケットをした。雰囲気を盛り上げると、自分で車いすを押すことができる子が思いっきり楽しんでくれる。

[看護師] かかわりを全力で楽しむこと。

 

このディスカッションでは、実に色々な視点からのリハビリについて話されました。
1‐1で出たように違いがあることを受けて、その上でできることとして多職種の連携の必要性をそれぞれが感じている場面が多くありました。
振り返りシートでも、「学校での様子などみなさんのイメージと現実結び付けられる機会があれば」「まずは気になる方のリハ風景の見学に行きます」「医療でわからないことは遠慮なくお申し付けくださいと医者が言える風土を広げたい」「重度の方の相談支援を受けることがハードルが高く見える。誰に聞いたらいいか知りたい」など、多くの連携を望む・実際に動こうという意思表示などの声が聴かれました。

 

今回のニコゼミは、初回であり、またオンラインでの開催という初めて尽くしでした。
オンラインで見知らぬ人同士で話し合うことの難しさがあったり、フラットな対話を目指しているのに職種が際立ち「先生」という言葉を使ってしまう場面もありました。
コミュニケーションのゼミの中で、まさにコミュニケーションの課題にぶちあたった初回となりました。

そしてディスカッションの内容としても、「違う場所に立っている」ということが意識される会になりました。
はじめから「みんな同じ」ができていたら、このニコゼミを開催する意味はありません。
今回、違いがはっきりすることは重要なことでした。
まさに「違う立場にある私たち」が、違いを知り、互いから学ぶ第一歩になったと感じています。

今後もオンラインでの開催を予定しています。
まだまだ模索段階でありますが、“互学”について考え実践していきますので、見守っていてください。

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≪ハナシテさんプロフィール≫
1‐1 主な臓器と子どもに関わる医師の役割について
●落合 正行(おちあいまさゆき)
九州大学病院小児科診療准教授。日本小児科学会専門医、日本周産期・新生児医学会専門医(新生児)、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。福岡市立こども病院、国立病院九州医療センターでの勤務を経て現職となる。
 
1‐2 身体の動きとリハの役割について
●黒田 隆之(くろだたかゆき)
作業療法士。「自分らしい作業を、自分らしい方法で、住み慣れた街で生活する事を支援したい」を軸に、作業療法士がちゃんと作業療法が出来る環境を作りたいと活動中。年齢に関わらず、みんなが住みやすい街をつくりたい。
 


主催:認定NPO法人ニコちゃんの会
助成:タケダ・ウェルビーイング・プログラム2018
協力:福岡大学病院小児等在宅医療推進事業